高山にやってください

米澤穂信についてつらつらと

映画氷菓について紐解くつもりが妄想が加速した ※10/29追記

お久しぶりです。
あるいははじめまして。



米澤穂信、好きですか?
私は大好きです。

本日、そんな米澤大先生のデビュー作『氷菓』を原作とした実写映画の
予告とポスタービジュアルが解禁となりました。


▼映画氷菓 ポスタービジュアル
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▼映画氷菓 予告映像
www.youtube.com



とてもワクワクする映像です。

実は私、映画氷菓のエキストラとして撮影にちょびっと参加していて
その手前今まで考察等書きづらかったのですが、
本日の情報で私がエキストラ撮影で手に入れた情報と
ほぼ同じ物が公開されました。

そんなわけで情報バレも気にする必要も必要なくなって
映画上映まで二か月もあることだしここいらで考察等まとめてみようかなと思った次第です。





この先の内容では
米澤穂信 〈古典部〉シリーズ
・アニメ  「氷菓
のネタバレを扱います。ご注意ください。


あと、後半は妄想が加速しすぎてぐだぐだなので
生温かい心で読んでいただけると幸いです。



まず、どの程度原作に沿っているのか?


氷菓』を始めとする〈古典部〉シリーズは
2012年に京都アニメーションによってアニメ化されました。

こちらはかなり原作に忠実に作られていたものの、
キャラクターの性格や物語のオチなどでも
アニメ向けに改変がされていました。

中でも大きな変化は、年代の設定でしょう。

原作では奉太郎たちは2000年に神山高校へ入学しますが、
アニメ氷菓では放送当時に合わせ2012年へと変更されました。



今回の映画氷菓では、
優しい英雄事件を「33年前」としていることから
原作に沿った年代設定のようです。
(アニメでは「45年前」の事件とされました)


では、内容的にはどうか?

KAD〇KAWAの青春ミステリの実写映画というと
ミステリ要素(の他にもガッツリ)と設定が削られたことが記憶に新しいですが
……さて氷菓の運命は如何に。

とりあえず、予告でも「日常に潜む小さな謎を解く」と言っていることから
優しい英雄事件だけでなく日常の謎パートも扱うようです。ほっ。



▼今回のビジュアルに変更される前の公式サイトの背景
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で、こちらを見ると

・創刊号の【持ち主】
・図書貸出記録の【(???)】
・【バックナンバー】のありか
・33年前の【文集「氷菓」(???)】
・地学準備室の【鍵】
・叔父の【失踪】
・【灰色】の青春
・関谷純の【言葉】
・【古びた各議場】の見える(???)
・偽りの【英雄】

以上の文が読み取れます。
不明の部分は(???)で表記。


これを見る限りはかなり原作に忠実なシナリオのようです。


「愛なき愛読書」は予告映像でも映っていて
ほぼ原作通りにやるものと思われます。

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ただ、「バックナンバー探し」については未成年の喫煙という扱いづらい題材な上、
遠垣内先輩らしき人物が全く映っていないこともあるので
内容の変更の可能性は高いと思います。


しかし、それ以上に問題なのは氷菓の核でもある「優しい英雄事件」です。

事件の中心人物であり千反田の叔父である関谷純には
人気若手俳優本郷奏多がキャスティングされています。

また、予告映像でも過去の神山高校のものと思われるカットが多数登場していることから
原作やアニメでは描かれなかった「33年前」に焦点を当てたものになりそうです。


では、それはいったいどんなものになるのか?










33年前を軸に再構築された氷菓

さて、ここからが本題です。

映画氷菓では「優しい英雄事件の映像化」以外に
もうひとつ原作とは違い大きく扱われているものがあります。


それが彼女。
「鍵を握る女」です。

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ビジュアルや図書室にいることからも
彼女は原作の糸魚川教諭であると予想できます。


また、映像中には33年前の彼女と思われる姿も確認できます。

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別に優しい英雄事件を映像化するのなら
彼女が何度も映ること自体は特段おかしなことではありません。

しかし、問題は彼女が図書室に置かれた氷菓を前にするカット。

ここでは、原作では最後まで登場せず
結局なぜ紛失してしまったのか不明のままだった「氷菓創刊号」が映っています。

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ここで二つの事実がわかります。

氷菓は劇中のどこかで図書室に置かれる
・またその時は創刊号が欠けていない


さらに、予告映像の前に公開された特報映像では
原作通りに段ボールに隠された金庫から氷菓が出てきたと思われる描写もあります。

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「神山高校五十年の歩み」や「団結と祝砲」を持ち寄って
奉太郎たちが推理をしている描写がある以上
金庫から発見された氷菓はやはり創刊号が欠けていたのでしょう。


また、先ほどの糸魚川教諭が氷菓を眺めるカットと
奉太郎が図書室で謎解きをするカットを比べると
後者では氷菓は置かれていません。

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そこで私はこう考えました。

氷菓は図書室から移動され
その際に創刊号は失われたのではないでしょうか?


映像で確認できる氷菓の一番新しい巻は「30号」です。
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面陳列されていることからこれが最新号だと仮定すると
図書室に氷菓が置かれているのは奉太郎たちが入学する3~4年前、
1996~97年頃だと考えられます。

この後、氷菓は移動され金庫の中へとしまわれることになったのではないか。
しかし原作では「元々金庫に入っていた氷菓が部室の入れ替えによって金庫ごと紛失した」
という経緯があってあくまで段ボールに金庫が隠されることになったのは
遠垣内先輩によって引き起こされた偶然でした。


では、映画ではなぜ氷菓はわざわざ金庫へと入れられ
さらに段ボールで隠されることになったのか。

学校の事情により他の部屋に移動するだけなのであれば
わざわざ金庫になんて入れないしましてや段ボールで隠したりはしません。

当然、何者かが意図的に氷菓を隠したことになります。

では、それは誰か。
こうなると当てはまるのはただ一人だけです。
古典部の関係者であり図書室にあった文集を管理する立場にあった
「鍵を握る女」……そう、糸魚川教諭です。


33年前の火災の日、現場の中心にいたのもまた彼女でした。

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原作では彼女の33年前はほとんど語られませんでしたが、
映画では事件を目の前で見てきた当事者の一人として描かれるのではないか。

そして、「先輩が残したのはただひとつ、氷菓」というセリフから感じられるのは
彼女は関谷純の真意を読み解くことができなかったのではないかということ。
(原作では、あえて言わないだけで気が付いていたのかもしれないという感じの描写)


そうだとすれば、奉太郎が謎を解いた末に彼女が何を思うのか、気になります。




(もうひとつ思い浮かんだ可能性として
 糸魚川教諭が氷菓を眺めるカットが映画のエピローグに当たる場面で、
 すべての事件を解決した後に氷菓創刊号が発見され
 まとめて図書室に安置されることになったというパターンも考えられますが)




最後に

上の考察……もとい妄想のなかで
「面陳列されていることから30号が最新」と仮定していますが、
これちょっと苦しいですね。

ここについては一応「30号」が何か重要な意味を持つ可能性がある
という発想に至ったあるモノがあります。


それがこちら。
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映画氷菓のエキストラ撮影に参加した際にもらえたノートです。

いやいや反則だろうそれは、と思われるかもしれませんが
SNSへの投稿オッケーでTwitterでも結構出回っていたので
考察の材料として扱わせてください。

で、ご覧の通りノートは「氷菓30号」をあしらったものです。

エキストラに参加したTwitterのフォロワーさんでも
なぜ30号なのかを気にしている方がいました。

原作を踏まえても30号の年には特に何もなく、
わざわざこれをノート化した理由はよくわかりません。


ですが、もし30号が特別な意味を持つとすれば
それは古典部の部員減少によって31号以降が作られなかった場合ではないか。


 追記:2017/9/9
 
 記事を読んでくださった
 Twitterのフォロワーさんより面白い指摘をいただいたので追記します。

 「氷菓30号というとちょうど折木供恵が在籍していた頃じゃないか」ということです。

 供恵は奉太郎の5歳上の姉です。
 神山高校に在籍していたのはちょうど1996~98年。


  ▼時系列と年齢の簡易まとめ
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  (氷菓の号数は毎年1号ずつ出ていた時の場合)
  (関谷純の年齢はもうひとつ上の可能性も。確定できる描写が見つけられませんでした)


 ただ、こうなると今度は「30号が最後の氷菓になった」という可能性は薄そうです。
 もしそうなれば、氷菓の刊行を断ち切ったのが他でもない供恵になってしまうからです。
 氷菓は少なくとも32号までは作られたと考えたほうがよさそうです。

 しかし、こうなると糸魚川教諭に対して供恵が何か働きかけた可能性なども考えられます。
 
 あえて30号に拘るなら、
 30号で供恵が書いたなんらかの内容が糸魚川教諭の心を動かし
 氷菓を隠すまでに至った……とかですかね。


 さらに追記:2017/10/29


 新しい情報が手に入ったため考察に追記をさせていただきます。

 まず、情報というのはこちら。

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 http://fansclub.jp/pc/event/detail/000203

 映画氷菓のグッズの文集「氷菓」ノートです。

 そして、『氷菓 創刊号』と一緒にあるのはなんと『氷菓 三十一号』!
 そしてその絵は、摩耶花が描きなおした表紙と思われるものなのです。

 つまりここから考えられる展開はこうです。

 前回の追記では否定しましたが、やはり氷菓は「30号」で一度休止したのではないでしょうか。
 なぜなら、年代設定が原作通りである以上、もし氷菓がちゃんと続いていた場合摩耶花が表紙を描くのは「34号」になるはずだからです。
 にもかかわらず、「31号」が奉太郎たちが作る氷菓として登場するということは、折木供恵が在籍中の「30号」でその発行が一度断たれたこと以外考えられません!


 つまり映画氷菓では関谷純や糸魚川教諭だけでなく、折木供恵までもを事件に積極的に絡ませあらゆる世代の古典部たちが動いていく話となるのではないでしょうか。


  追記ここまで




まあ、こんな妄想を語れるのも映画公開前の今のうちだけなので
存分に語らせていただきました。




後半は妄想が過ぎましたが、
映画氷菓が「優しい英雄事件」を大きく扱って映像化するのは間違いないでしょう。

それは、原作はもちろんアニメやコミックスでも為されなかったアプローチです。

氷菓」が世に出てから16年にして作られる新たな氷菓
果たしてどのような形になっているのか。
映画の公開が待ち遠しいばかりです。